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その家づくり、ちょっと待ったPHP研究所 中野博(エコライフ研究所)より  

『過敏症』より危険な『鈍感症』
室内の化学物質によって受ける影響には個人差があり、極微量の有害物質であっても、のどの痛み、頭痛、目の痛みなどを訴える人もいれば、相当量を吸っても何の症状も感じない人もいる。一見、後者の方が健康そうで、前者の方が気の毒に感じるが、はたして本当にそうだろうか。むしろ、化学物質過敏症のほうが体内の機能が正常に働いていると考えられるのではなかろうか。
 害をおよぼす物質が体内に入ってきた場合、私達には、それを阻止しようとしたりシグナルを出したりする機能が備わっている。化学物質過敏症とは効したシグナルの一つと考えられている。このシグナルを素早くキャッチすることによって、早めに有害な化学物質から身を守ることができるのだ。
 しかし、このシグナルに気づかない、いわゆる化学物質鈍感症の場合には、有害な化学物質であっても気にならずに吸い続け、場合によっては身を滅ぼすことになるかもしれない。
 専門の医師によると、化学物質過敏症の人に症状が出れば、同じ環境にいた鈍感症の人の血液中からも相当量の化学物質が検出されるということだ。ここで、化学物質過敏症が発症するメカニズムをやさしく説明する為に、医師が使うコップと液体のたとえ話があるので紹介しよう。
コップの中に液体を注ぎこんでいくと、やがてその液体はあふれ出してしまう。注ぎこまれる液体の量が多ければ多いほど、コップから溢れ出すのは早い。
 ここでいう『液体』は化学物質過敏症を発症させる要因、『コップ』は化学物質に対する適応能力のたとえである。コップから液体が溢れ出すということは、適応能力を超えて、発症要因が蓄積され、過敏症が発症することを意味する。
 直接的には体内に蓄積された化学物質(環境要因)が発症の引き金となるが、持って生まれた体質(遺伝的要因)や老化など複数の要因がからんでいるといわれている。人によって発症の時期が異なるのは、こうした化学物質以外の要因に個人差があるからだ。
 しかし、同じ環境に身を置いていれば同じ量の化学物質が体内に蓄積されているということだから、たとえ少しずつ液体を注いでいってもいつかはコップから溢れ出してしまうように、遺伝や老化などの影響が小さい人も、化学物質を浴びつづければやがて症状が出るはずだ。そうだとすると、敏感な人が発症したときに、まだ症状が出ていない人も同様の対策をとらないと、やがて大変な事態になることは容易に予測される。ここに目に見えない化学物質の、本当の恐ろしさがある。

医師にもわからなかった病気の原因
住宅会社、医師、消費者の連携で解決を
これまで述べてきたシックハウス症候群、化学物質過敏症あるいは鈍感症というのは、多くの場合、住宅に主要因があることがわかってきた。家族の安らぎの場であるはずの家の中に、家族を不幸にする原因があるなんて信じられないことだ。私たちはこれまで住宅会社をプロと信じ、まさか病気をつくる家を建築しているとは考えもせず、任せてきたのではないのだろうか。しかし、そのプロでさえも建築した住宅と病気との因果関係がわからないことが多かったため、今日のようにシックハウスが社会問題となっているのだ。
 さらに、もうひとつ大きな問題がある。それは私たちの病気に対して適切なアドバイスをし、治療してくれるはずのプロ、医師である。
 通常医師のところへ行って症状を訴えれば、医師は適切な処置をしてくれて、私たちは健康な状態を取り戻すことができる、しかし、その医師にもわからなかった病気がシックハウス症候群であり、化学物質による健康障害なのだ。
 これらの症状の原因を早期に見抜いた医師として知られる北里大学病院の石川哲教授は、健康被害の状況について次のように語る。
 『現在、10人に1人以上の人たちが化学物質による健康被害の症状を引き起こし、本人にもうまく説明できない体の不調に悩んでいると考えられます。しかし、残念なことに、適切なアドバイスや治療がほとんどできないのではないでしょうか』
 石川教授は眼科医だった15〜16年前から化学物質による人体被害を研究してきた、この分野の第一人者である。
『体調の変化と有害な化学物質との関係はきわめて重要です。アレルギーについては研究が進んできていますが、“ポストアレルギー”ともいえる化学物質過敏症の研究は医学の世界でも新しい分野なのです。もう少し詳しく説明しますと、化学物質に一度接触し、軽度の急性中毒症状が発現する。その後、かなりの微量の同種の化学物質に再度接触すると化学物質過敏症が発症するのです。症状としては、頭痛、めまい、目や鼻の痛み、のどの痛み、さらには疲れやすいとか呼吸が苦しいといった身体の不調があらわれます。その症状が進行すると、アトピー性皮膚炎や喘息などの慢性アレルギーへと発展していくのです。』
 ここで先ほどのコップの液体の話を思い出してみよう。  
 コップから液体があふれたとき、化学物質過敏症が発症する。石川教授をはじめ、この問題に詳しい医師らによると、発症には個人差があり、症状はその人の体のもともと弱いところにあらわれるらしい。人によって、それがアトピーだったり、頭痛だったり、あるいは目や鼻の痛みだったりするわけだ。
 石川教授はさらにこう話す
『最近多くの人たちが、体の調子が悪い、だるいというように、なんと表現したらよいかわからない体の不調を訴えるようになりました。しかし、これは医学的検査ではとくに異常が見られないという診断結果になるのです。多くの医師たちは、現代の住宅特有の化学物質と症状例との関係を十分に認識していません。実はここにも大きな問題が
あるのです。医師が早い段階で原因に気づき、手を打たなければ、ますます健康被害が増えてしまいます』
 住宅建築会社と医師、一見関係がなさそうな組み合わせだが、私たちの健康にとってもっとも大きな影響を与える人たちだということがわかるだろう。この双方が健康被害 の問題をよく理解し、予防医学の立場にたった対応策をとってもらいたいものである。

対処療法よりも予防が大切
化学物質と住宅、そして健康と因果関係は、多くの識者にとってかなり明らかになってきた。このため、今ではテレビ番組などで取り上げられたり、本もたくさん出ているので、その実態を私たちも知ることができる。
 しかし、日本からシックハウスが消えるまでにはまだ時間がかかりそうだ。まず、すべての住宅建築関係者が家をつくる際にガイドラインを守ることが最低限必要だが、現段階ではガイドラインはすべての業者には行き渡っていない。
 つぎに、住宅建築を依頼する側が厳しい目をもち、すべての医師に知らせることが必要だ。なぜならば、場当たり的な対処療法では根本的な解決にはならないからだ。病気を治すためには原因の理解が不可欠であり、原因がわからない為に不適切な治療をしていると、健康被害は減少しない。いや、むしろ増加するばかりとなってしまう。
 さらに、予防医学の見地に立った対処策も必要となる。病気を治すだけでなく、病気にならない為のアドバイスをすることも医師の役割だからだ。シックハウス症候群に代表される化学物質と住宅、そして健康との因果関係をつきとめたあと、それらの病気にかからないようにする家づくり、生活スタイルなどを提案することが重要なのだ。
 ここでカギを握るのが住宅会社である。医師は住宅建築のプロではないため、いくら因果関係が解明できても家を建てることはできない。そのため、この問題に詳しい医師による勉強会などに、建築会社が参加して学んだり、建築会社みずからがこの問題を積極的に研究して住宅に反映させることが解決の近道と考えられる。
 これからの住宅を建築する会社には、まさに予防医学的対応のできる、地域における『住医』としての役割が求められているのだ。
 そして住宅を求める一般の人たちが、そんな会社だけを選ぶようになれば、競争原理が働いて本物の健康住宅を提供する住宅会社が増えていくのではないだろうか。

こんな自覚症状がでる家には要注意
☆ 化学物質の匂いがする
☆ 吐き気がする
☆ 目がしょぼしょぼしたり、チカチカする(充血することもある)
☆ 涙が出る
☆ くしゃみが出る
☆ 鼻水が出る
☆ 鼻の奥が痛く感じる
☆ 口の中が苦くなる
☆ のどが渇いたり、イガイガする
☆ 頭がボーとしてくる
☆ 頭が重くなる
☆ 頭が痛くなる
☆ めまいが起きる
☆ 筋肉や関節が痛む
☆ 息苦しい
☆ 足が冷える
☆ 夜になると食欲がなくなる
☆ 寝つきが悪くなる、不眠症になる
☆ 性欲が減退する
☆ トイレが近くなる
☆ イライラする
☆ 不愉快になる
☆ 怒りっぽくなる
☆ 大声で叫びたくなる
☆ ものを壊したくなる
☆ ゆっくり考えなくなる
☆ 何となく体が落ち着かず、ゆったりした気持ちになれない
☆ つまらないことでけんかになる
☆ その場に長くいたくない
☆ 子供の落ち着きがなくなったり、不機嫌になる
☆ 子供が泣き出す
☆ アレルギー症状をもつ子供がすぐに泣き出す
☆ 家中を開けっ放しにしないと息苦しい
☆ 外へ出るとラクになる


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